水分補給が予防のカギ
スポーツ現場における熱中症について
人間の体内の6割を占める水分をきちんと摂取することは、競技のパフォーマンス能力を最大限にひきだすために重要なだけでなく、補給を怠ると生命にまで影響を及ぼしてしまいます。 熱中症は夏だけでなく、4月5月から秋にかけて、気温・湿度の高い日であればいつでも起こりやすく、毎年死亡事故が報告されています。熱中症は、他のスポーツ傷害などと違い、明らかに予防できる障害です。 「喉が乾いた」と感じる時点では、人間の身体は既に相当量 の水分を失っています。熱中症についての正しい知識を身につけ、適切な水分摂取を行うことが最大の予防法となります。
熱中症とは
高温な環境が原因となって発生する障害を総称して熱中症といいます。スポーツなどの運動をすると筋肉などから熱が発生し体温が上昇します。激しい運動中に身体から発生する熱の量は、安静にしている時の10倍以上になるといわれており、体温の上昇に伴い皮膚の血管が拡張し、そこを流れる血液の量 が増えます。また汗も出て、余分な熱を身体の外に放散させます。これらの生理的しくみによって、体温はほぼ一定の範囲内に保たれます。ただし、高温の環境下では、これらの仕組みが正常に働かなくなることがあります。大量に汗が出ているのに水分を補給しないでいると、身体は脱水状態となり、体内を循環する血液の量 は減って熱の放散が逆に減ってしまったりするのです。このような状態が熱中症です。
熱虚脱/熱失神 Heat Syncope
俗にいう日射病がこれにあたります。発汗による脱水や運動中の筋肉への水分貯留や下肢の浮腫のために、身体を循環する血液の量
が減少し、脳に血液を十分に送ることができず、一時的に脳の虚血状態を起こすことをいいます。朝礼などで直射日光の下で長時間立ったままでいたり、夏合宿などで高温の環境のなかで急激に運動した場合に失神したりするのがこれです。
熱痙攣 Heat Cramp
運動中に沢山汗をかいて水分を補給をする際に、電解質を補給しないまま水分だけを摂取することでナトリウムの欠乏状態が生じ、それによって筋肉の痙攣が起きることがあります。高温多湿な環境での重労働や、春から秋にかけての競技中・練習中に起こることが知られています。とくに、夏場に長時間にわたる過酷なトレーニングやマラソンなどの競技を行いながら、水分を十分に補給していないと、生じる可能性は大です。発汗とともに、身体のあちこちの筋肉が痛みとともに痙攣するのが特徴です。
熱疲労 Heat Exhaustion
大量の発汗や、不十分な水分補給、更には体調不良から下痢などを起こしている選手にもこの障害は起こりやすいとされています。皮膚は青白くてやや冷たく、体温は通常か若干上昇しています。喉が乾く、身体がだるいなどの症状の他、頭痛、めまい、吐き気なども訴えます。熱疲労は、熱射病の前段階ともいえます。この時点で選手の異常に気づいてやれることが、熱射病の事故防止につながるのです。
熱射病 Heat Stroke
熱射病は、体温が放散されずに体内に蓄積され、身体の内部の体温(深部体温)が異常に上昇しているという極めて危険な状態です。体内の体温調節中枢機能に異常をきたし始めているため、自分で発汗して体温をさげようとすることができなくなります。このため、皮膚は赤くほてった状態で乾燥しています。熱疲労の症状に加えて、嘔吐や意識障害、意識喪失などが挙げられます。
症状・徴候
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熱けいれん |
熱疲労 |
熱射病 |
| 原因 |
発汗などによる体内電解質の不足 |
体内の水分不足 |
水分不足からくる体温調節中枢機能障害 |
症状 ・ 徴候 |
下腿、大腿、腹部などの 筋けいれん |
大量の発汗、皮膚は青白くじっとりしている、体温は正常かやや高め、喉の乾き、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐 |
発汗がなく乾燥した皮膚は赤く 熱っぽい、体温上昇、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、意識障害、錯乱、 昏睡、全身けいれん |
| 処置法 |
薄めたスポーツドリンクなど 電解質を加えた飲み物の補給、痙攣が起きた部位の軽い ストレッチとアイシング |
涼しい場所へ移動させ、 衣服をゆるめて安静。水分補給を十分に行う |
救急車を呼ぶ。待機の間、意識がある選手には水分補給を。また体温を下げるための全身アイシング。脈などをモニター |
熱中症になりやすい人
- 体の大きい人:
これは肥満気味の選手に限らず、筋肉質な人の場合にもあてはまります。重いものを動かす時には大きなエネルギーが必要という物理の法則を思い出してください。
- 年齢層の若いもしくは高齢の人:
体がまだ未発達の段階の選手、あるいは体力が衰えてきている選手には注意が必要です。
- 体調の悪い人:
風邪などを引いていて体調が万全でない選手、あるいは下痢をしていて脱水症状気味の選手は熱中症に陥る危険性が高くなります。
- 過去に熱中症を経験したことがある人:
一度でも熱中症を経験している選手は、上記のなんらか、もしくは他の理由で脱水症状になりやすい体質のはずです。十分注意し、再発は避けましょう。
予防ガイドライン
- 環境条件を把握し、それに応じた練習、水分補給を行う。
- 練習時間をずらす:日中の一番暑い時間帯は避け、早朝か夕方に切り替える。
- 水分補給:運動前数時間かけてなるべく沢山の水分を少しずつ摂取、運動中は15〜20分おきに150〜300mlの水分を摂りましょう。
競技終了後の水分補給も忘れずに。運動終了後しばらくたってから熱中症の症状がでることもしばしばあります。
試合などが控えている際は、前の日の晩から水分を多めに摂取すると、熱痙攣などの予防にもなります。
- 衣服の工夫:なるべく風通しのよい素材の練習着・ユニフォームを選ぶ。色は白っぽいものが熱を吸収せず、望ましい。
- メディカルチェック:基礎疾患をもっている人はもちろん、その日の体調(睡眠不足、疲労、下痢、発熱など)も把握しておく。
- 運動前後での体重測定:体重の3%以上(例:体重が70キロある人は2.1キロの体重減)が水分で落ちる選手は、他の選手よりも頻繁に水分補給することが必要。
- 指導者やトレーナーの監視:練習中動きのおかしい者、顔色の悪い者、頭痛などを訴えてくる者がいたら、必ず休ませる。
スポーツ現場の緊急事態に即対応
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| 熱中症A |
熱中症B |
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| 誰かが熱中症にかかってしまった時の対処法をわかりやすくデザイン |
熱中症にならないよう、予防策を気温と湿度の見地からアドバイス |
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